So-net無料ブログ作成
検索選択

薔薇の咲く庭 [創作童話]

薔薇の咲く庭

街はずれに古い洋館がありました。
そこは秘密めいた不思議な場所でありました。
遠くからはきれいなお屋敷が見えるのに、
近づくと、周りの木々や高い塀が邪魔をして、
館の様子は全く見えないのでした。

ある日、近くに住む女の子が館の近くを歩いていると、
急に風が吹いてきて、帽子が飛んでしまいました。
帽子は風にのって、ひらひら、
塀の隙間から、洋館の中にはいってしまいました。
まあ、どうしましょう?

塀の隙間からのぞいてみると、きれいなお庭がみえました。
奥に噴水があって、帽子はその手前に転がっていました。
誰もいません。
女の子は勇気を出して、隙間からお庭に入っていきました。

中に入ってみると、お庭はさら美しく、
たくさんの薔薇の花が、色とりどりに
それは見事に咲いていました。
思わず見とれていると、「あなたはだあれ?」と声がしました。
ビックリしてあたりを見回すと、同じ年ごろの女の子が薔薇の茂みからでてきました。

「黙って入ってごめんなさい。
 帽子を取りに来たの。ほら、あれ。」
「そうなの。私ね、茉莉。あなたは?」
「加奈。こちらにお住まいなの?」
「そうよ。私お友達がほしかったの。
ちょうどお茶の時間だわ。来て。」
茉莉は加奈の手をひいて、屋敷の方に連れて行きました。
加奈はびっくりしましたが、
茉莉の笑顔につられて、そのまま、屋敷に入っていきました。

お屋敷の中は、古い映画のようで、加奈がみたこともないような、
広くて立派なお部屋でした。
壁には大きな棚、天井にはシャンデリア、
窓際に大きなテーブルがあって、
そこにはお茶の準備ができていました。
綺麗な女の人が、茉莉と加奈をみて、ちょっとびっくりしていいました。
「あらあら、どうしたのかしら?」
「お庭で会ったのよ。こちらは加奈ちゃん。」
加奈はちょっと照れて、「こんにちは。突然失礼します。」といいました。
「かわいいお客様は大歓迎よ。さあ、座って。
チョコレートはお好き?」
女の人は優しく笑っていいました。
2人の女の子はすぐに仲良しになりました。

おしゃべりしているのが楽しくて、あたりはあっという間に暗くなりました。
いけない、私帰らないと。
茉莉ちゃん、またね。
加奈は入ってきたのと同じところから、庭をでました。
ちょうどその時、風が吹いて、別れを惜しむかのように、
薔薇の花が揺れました。

家の近くまでくると、慌てた様子で、お母さんが駆け寄ってきました。
「加奈!どこにいたの?
さがしたのよ。」
「帽子を取りに行ってたの。」
「え?」
お母さんはとても驚いた様子です。
「3日もどこに行ってたの?」

加奈はおやつを食べて、少し遊んだだけのつもりでしたが、
お家のほうでは、3日もたっていたのです。
洋館で、お茶とお菓子をごちそうになって、
女の子と遊んだ話をすると、お母さんはさらに青ざめました。
あそこには、何年も前からだれも住んでいないはずよ。

加奈はふと、お茶の時間に薔薇の花をもらったのを思い出して、
お母さんに渡しました。
お土産。きれいでしょう?
淡いピンクのきれいな花。
薔薇を見たお母さんの顔が曇ったのに、
加奈は気づきませんでした。

加奈の失踪事件は近所ではちょっとした評判になりました。
帽子が入っていった、塀の隙間をみようと、
何人かが探しましたが、隙間は何処にもありませんでした。
門から覗いてみても、薔薇の花がみえるばかりで、人の気配はありません。

加奈も茉莉にまた会いたくて、塀のところに行ってみましたが、
やっぱり隙間はどこにもありませんでした。
もらった薔薇の花は、花が終わった後、
もしかしたら、と思って植木鉢に植えたら、芽がでてきました。
翌年、花が咲きました。
加奈は花を見るたび、不思議な薔薇のお庭を思い出しました。

ところで、閉ざされた塀の奥、誰の目にも見えないお庭で、
薔薇は美しく咲き続け、
美しい女の人と茉莉は二人でお茶を飲んでいました。

女の人は言いました。
「加奈ちゃんに会えてよかったわ。
あの子は妹の娘なの。
妹は人間に恋をして、ここから出て行ってしまったの。」

茉莉は言いました。
「加奈ちゃんを帰してしまってよかったの?」

女の人はいたずらっぽく笑っていいました。
「いいのよ。まだその時ではないから。」

茉莉はにっこりしていいました。
「気が長いのね。」

風が吹いて、薔薇の樹々をゆらします。
薔薇の花たちはおもたげに首を振って、
あたりは一面良い香りに包まれました。
風が通り過ぎると、そこには誰もいませんでした。

        おわり



hana2.jpg
nice!(26)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 26

コメント 3

extraway

「いいのよ。まだその時ではないから」、ということだと、この後の展開が気になりますね。全然中身は違うけれども、上田秋成の雨月物語がちょっとかすめる部分あり、映画の主演森雅之で、茉莉と言えば森茉莉で・・・・・・・。関係のないところを泳ぐ、当方の傾向。それにしても、ふしぎなものがたり。brainのどこから生まれるんだろう?
by extraway (2017-06-16 21:35) 

sknys

「人魚姫」と「浦島太郎」を掛け合わせたような物語ですね^^;
散歩に出たKは風に飛ばされた婦人用帽子を掴んで洋館の中庭に降り立ち、
盲目の美少女と出会う。
「ロボット刑事」の中のエピソードです。
帽子、洋館、少女、薔薇‥‥は物語の普遍的な道具立てなのかもしれません。
by sknys (2017-06-20 00:46) 

ぶーけ

extrawayさん、
茉莉、は森茉莉からとりました。茉莉の理想の女の子のイメージで。
部分的に絵が浮かぶのですが、文章にするのが難しいです。

sknysさん、
人魚姫も浦島太郎も頭になかったのですが、いわれてみるとそうかも?「ロボット刑事」は読んだことないです。
すごく平凡な舞台ですよね。^^;絵にはなるけど。
by ぶーけ (2017-06-26 11:05) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。